寝ないヒトビト  --01.07.22 





なにごとであれ「自分の限界と適量」を知っている人が、好きである。

好きというより、安心してつきあえる、とでも言った方が近い。
数々の修羅場をくぐり、自分が出来る範囲を知り、自分を過大評価も過小評価もせず、自分なりに「限界と適量」をつかんでいる人。

お酒を例に取ると、「ちゃんと自分の酒量を知っている人」かな。

お酒との距離感が見事で、淡々とするべきときは淡々と楽しみ、とことん行くべき時はしっかり(限界を見据えながら)腰を据えて飲む。自分の限界を知っているから、つぶれるような醜態はさらさない。急性アルコール中毒になるような無茶もしない。そして、他人にも「飲め!」とも強制しない。

それにはたぶん「お酒と一時期真剣につきあった」という濃厚な時間が必要なのだ。
飲めない人は飲めない人なりに、自分とお酒との距離感を一時期でも真剣に考えた時間が必要なのだ。

駅のホームで前後不覚のゲーロゲロも経験し、3日くらい二日酔いで使い物にならなかったり、飲みすぎたあげく人に絡んで取り返しのつかないことをしてしまったり・・・そういう修羅場をちゃんと踏み、そのうえで酒と一対一で語り明かす孤独の時間も知っている。

そんな人。

サッカーで言うなら、ピッチ(サッカーグラウンド)の隅々まで知り尽くしている感じ。
新人のころのがむしゃらさ、ビギナーズ・ラックなども経験し、ケガもスランプも通り過ぎ、世界の広さもわかり、アウェイのプレッシャーも知り尽くし、そして自分の限界と才能をちゃんとわきまえ、持てる能力を出すべき時に出せる人。

ひらたく言うと「ちゃんと経験をつんだ人」ってことかもしれない。


お酒にしろ、サッカーにしろ、レストランにしろ、勉強にしろ、音楽にしろ、恋愛にしろ、「一時期やり込んだ人」はやっぱり違うのだ。

(ちなみに、勉強を一時期ちゃんとやり込む、という意味においては受験勉強は大変意味があるとボクは思っている)




それはもちろん、仕事についても、言える。


一時期、ちゃんとやり込んだ人は、見るからに違う。
逆に言うと、ちゃんとやり込んでない人は、ひと目みれば、まぁわかる。

不感症度合いが違うのだ。
なんつうか、繊細すぎる。

ちゅうか、仕事を一時期異様にやった人は、共通して超不感症なのである。

少々のことでは驚かない。
眠そうな目で「ふーん、それで?」と具体的案にすぐ移る。
状況をさっとつかみ、どんなきつい仕事でも「まぁそういうこともあるかもねー」みたいにショックを受けない、騒がない。それはちゃんと経験をつんでいるからこそできる技、なのである。

こういうタイプの人といると、妙に安心する。
仕事に関しては、かなり好き。一緒に仕事をしたくなる。
そんなに世の中に広く生息するタイプではないが、あるパーセンテージでちゃんと存在するのである。




で、実はわりとボクもそういう方である。

まだまだ惑いもパニックもヒステリーもあるが、他人と比べるとかなーり不感症である。
それなりに修羅場はこなして来ているので、少々のことでは驚かない、こたえない。


そして、3月から数々の修羅場を一緒にこなしてきたF(女性)も、かなりな不感症なのであった。

「佐藤さんも、かなりですねー」
「オマエモナー」

お互い、お互いの不感症度合いを指摘して笑い合うくらいは、不感症なのである。

徹夜が何晩続こうが、どんなに理不尽なことが起ころうが、なんとなく「ま、そういうこともあるよねー」みたいに平然と対応してしまうところがある。
ある意味、頼もしいパートナーなのであった。




4月くらいから、このふたりにもうひとり仲間が実質的に加わった。

K(これまた女性)である。


ボクとFは、Kはまだ「限界と適量」を知りきってはいない、と思っていた。
で、このプロジェクトが、彼女にそれを教えるであろうと感じていた。

「それって、とてもいいことですよねー」
「自分の限界と適量を知れるほど仕事量をこなすと、一皮むけるからねー」
「ある時期すごい量をこなすと、人間、化けますよねー」
「彼女は才能的にスゴイから、大化けするかもねー」

などと、自分たちの身の程を顧みず、とっても偉そうなことをふたりで話し合っておったのだ。ええ、そのころは、ね。




で、予想通り、Kに試練を与えるであろう修羅場な毎日が訪れた。

つうか、Kだけに訪れたのではない。
ボクとFKの3人が超大車輪で働いてもまだ足りない、そんな地獄な毎日が、6月7月と訪れたのである。


具体的に言うと、ボクが週3日完徹、Fが週4日完徹、Kが週5日完徹。そんなウソみたいなことを毎週やっても間に合わないほどの仕事量!!




・・・あのさ、普通さ、週のうち3日完全徹夜すると、ふつー死なない??
   それも毎週のように、一ヶ月以上だぜ。


ボクは週3日完徹で、かるーく死にましたですよ。つうか死んでる暇なかったので、死につつ働きましたけどね。
それでも、とりあえず40歳で一番年上ということもあり、疲れ切ったらお先に帰らせてもらいました。家庭もあったしさ。
一方、FKは30代始めで独身。そういう意味では徹夜もボクよりこなせる計算。
でもでも、Kに至ってはなんと週5日完全徹夜を平然とこなすのだ。誇張ではない。マジで一睡もせず週5日丸々作業場にいたりするのである!
うーむ、そういう体力っていったい・・・



5日間完全徹夜したある朝5時、景気づけに飲みに行った(行くな!)店で、化粧っけのないKが明るく言う。

「あたし、いまからインライン・ホッケー行きたいくらい元気ですよー」(彼女は趣味でインライン・ホッケーをしている。毎週末、元気に走り回っているらしい)

「へ? い、いまから? つ、疲れてないの?」

「あたし、基礎体力、すごいんですー」





・・・こ、こいつ、酒量的に言うと、いわゆる、ザル??





「まだもう1日くらいかるく徹夜できますー」





こいつ、ザルというより、ひょ、ひょっとして、ワク???

(注)ワク:ザルから編み目を取り去って残った枠(わく)に例えて、ザルよりジャージャーな感じを表す。






週4日完徹しながらヘラヘラ笑っているFもかなりな強者ではあるが、Kについては想像を超える。

彼女は自分の限界と適量など知る必要もない。
いや、知る日が来るとも思えない。




「あたし、体力の限界って、よくわからないんですよー」







・・・・・




世界は、広い。

「限界と適量」を知っている人を尊び、自分でも「限界と適量」を知っているつもりになっていたボクであるが、井の中の蛙であった。


いや、参りました。
ボクなんかまだまだオコチャマだわ。




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