おふ〜んらんす --02.08.19



あぁ、フランスから帰ってから1ヶ月半も経ってしまった。

早く書こう書こうと思っていたのだが、ま、例によっていつもの如くいろいろなことが重なりまくり、まったく書けなかったのだった。って、このごろ言い訳多いよね(昔から?)。

で、フランス旅行記も半分くらいで止まっている。
行ったのは、コートダジュールとプロバンスとパリ。実に極楽な旅であった。いや半分出張だったのだが、半分は休みをとって旅をした。マジで良かった。フランスは歳とってからゆっくりね、などと思っていたのだが、こんなにいいならもっと早く回ってりゃ良かった。

下調べをきっちりし、コートダジュール方面経験者からいっぱいヒアリングしたおかげで、強烈に成功した旅だった。経験者たちのトライ・アンド・エラーをすべて聞いて、エラーを避けて当たりしか狙ってないから当たり前とは言える。

とにかく結果的に「レストランも観光地も、当たりの確率がここまで高い旅は初めてかも!」なレベルだったのだ。ちゃんと書いてサイトに載せれば、後からあそこらへんに旅する人たちにとってすごく有用な情報になるとは認識しているのだけど、書く暇と気力が出ないんだから仕方ないなぁ(←開き直り)。

あ、それと、向こうで一緒に遊んだカンヌ在住の女性(ミーヌ;日本に20年近く住んだことあり、日本語ペラペラ)が「さとなおさん、ここはサイトで発表したりしては絶対ダメよ。絶対ね。穴場なんだから」というところばかり教えてくれ、それらがまた極楽だったのよ〜〜。
それらを書いてはいけない、という規制が、「うーん、だったら旅行記も魅力半減だなぁ」となり、なんとなく筆が進まないのである。うはは。すまんのー。



ま、それはともかく、フランスである。

今日はフランスで「ふ〜ん」と思ったことを大雑把に書いてみたい。
いま思い出せる範囲で。
旅行記にまとめるかどうかは別にして、気が向いたらこうしてここに印象を書き残していこうと思う。

 



フランスには出張で出かけた。

カンヌで仕事があり、わりと自由な時間もあったので、カンヌ周辺(いわゆるコートダジュール)をいろいろ巡った。ここらへんは上記のように完璧と言えるほどの旅。コートダジュールの真髄を味わった気がする。日本人はほとんどいないところばかりだったから、日本のガイドその他では取り上げられてない場所ばかりに行ったと思われる。
というか、コートダジュールは白人の遊び場だ。基本的に「白人以外の人種よ、来るな」な場所だとボクは理解している。黒人もまるで見なかった。だからきっと、黄色人種であるボクが紛れ込める場所はまぁ知れているのだと思う。コートダジュールの真髄は白人以外禁制の、どこか別の場所にあるのだろう。いや、卑屈になっているのではなく、客観的に。だから、そういう意味で、ボクが経験したのは黄色人種が行ける範囲での最高レベル極楽なのだろうなぁ。←高額という意味ではまるでない。それにカジノも行ってない。好きではないから。

その後、プロバンスはリュベロン地方に移動。
あの「南仏プロバンスの12ヶ月」を書いたピーター・メイルが気に入って住みあまりの素晴らしさに永住を決心し、本まで書いたあたり。まぁなんというか、最高としか言いようがない。季節は6月末。バカンス前で人もほとんどおらず、ラベンダーをはじめ花がすべて満開。それがただでさえおいしい空気に溶け込み、もう息を吸うだけで至福。
そして、料理がまた強烈にうまかった。野菜も肉もワインもチーズもすべて「ここから200メートルほど行ったところの畑で…」という感じで、すべて地元のもの。地元のものを、取れた空気と同じ空気を吸いながら食べるのがこんなにうまいものだとは・・・
おかげでプロバンスからパリに移っても「あれ〜パリって美味しくない〜」と思わされたくらいで。

と、そんなこんなな旅の途中で感じたことを少しだけ。



■ほとんど英語が通じるようになっていた


「フランス人は英語がしゃべれてもわざとフランス語しかしゃべらない」と俗に信じられていて、20年前にフランスを旅したときも確かにその通りだった。わざとかどうかは知らないが、とにかく圧倒的に英語が通じなかった。ホテルみたいな客商売でもフランス語しか解さないフロントマンがいたりした。

が、状況は大きく変わっていたのである。
フランス人の方から進んで英語で話してくる!

今回2週間フランスにいて、英語がまったく通じない思いをしたのは、カンヌで道に迷って、歩いてるオジサンに道を聞いたときのみ。割合でいうと100分の1程度のもの。
もちろん英語が下手な人はいっぱいいる。でもまぁまず英語で通じる。大変な変わり様だ。しかも彼らも英語を勉強中だったりするから、とってもわかりやすい発音と文法で話しかけてくる。これが我々日本人には実にわかりやすいのだ。
そして、英語が話せないことを恥じてるフランス人も多くいたのも驚き。こちらが英語で話しかけると必死に英語で応えてきて、そのうえ「プアーな英語でごめんなさいね」とマジで恥ずかしがったりする。

ふーん、変われば変わるものだねぇ・・・

 

■暇をもてあましているフランス人たち

なんと、いまフランスでは週35時間しか働いてはいけないという法律があるらしい。つまり週5日働くなら1日7時間以上働いてはいけないのだ。それ以上働くと罰金もしくは休暇をとらないといけないらしい。

ワーク・シェアリングが目的だとか。たとえばお店を週6日60時間開けるのであれば、残りの25時間は他の人を雇わないといけない、ということである。
これで打撃を受けているのは小さい個人商店。夫婦ふたりでやっているところなど、人を雇わないと店がやっていけなくなる。週35時間のオープンでは儲からないからだ。で、給料を払わないといけないから人件費がかさむ。大変だ(かなりの部分を国が払ってくれるらしいのだが)。

で、得をしているのはリゾートと旅行業者と航空会社。
なにしろ、週35時間以上働いてはいけないのだから、みんな暇なのだ。下手すると週休3日とか普通にあるらしい。で、みんながリゾートに出かける。だからいまではシーズンオフでもリゾートホテルはいっぱいらしい。

ふーん、なるほどね。
実際、6月のバカンス前のコートダジュールの砂浜は、真夏の江の島海岸状態であった。まさに芋の子洗い。
おいおい、これが世に名高い優雅なリゾート地かよ!と怒りたくなるくらいな混雑具合。これってみんな暇をもてあました人たちなのね。そういや名高いリゾートのわりに客層が悪い。そういうことか。

・・・しかし、ボクも普段残業イヤとか働くの嫌いとか言っているが、いざ「週35時間以上働いたら罰金です!」とか言われたら「もっと働かせて〜!」って思うかもねぇ。

 

■日本は税金天国だった!

ワークシェアリングの一環として週35時間しか働けないかわりに、新たに人を雇うのにどうやら政府がかなりの保証をしてくれているらしいのだ。
で、それらのお金はどこから出てるかというと、もちろんすべて税金なのである。

前述のミーヌ(はっきり言って美人。独身)は「税金が高い上に週35時間しか働けないから給料も一定。物価の高いパリなんかではとてもじゃないけど暮らしていけない」とぼやく。

ぼやくどころか、二言目には「日本って税金安くてサイコー!」というのである。
「えー、決して安い印象ないけどなー」というと「何言ってんの!贅沢よ!」と怒られる。

そういえば、フランスは物品税が18%。
日本は5%。それでも高いとどこかの党は主張していたなぁ。
フランスは物品税同様、いろんな税金がめちゃめちゃ高いらしい。ふーん・・・ま、日本の方が高い税金分野もあるとは思うが、一般にそういう印象らしいのだ。

と思ったら、ある日、イタリア在住の日本人と知り合いになった。
「どうですかイタリアの暮らしは」と、半分羨みをもって聞いた。なにしろイタリアだ。羨ましい。そしたら、なんとその女性も同じことを言ったのである。

「イタリアはもー税金が高くてたいっへん! 日本って税金安くてサイコー!」

みなさん、認識を改めましょう。
日本は税金がめちゃ安いのだ。
文句ばっかり言ってるとバチが当たるというものだ。

 

■色白日本人は笑われている?

ミーヌと話しているといろいろ発見がある。
「どうしてヨーロッパではみんな一分一秒を争って日焼けにいそしむのか」と質問したら、「あら、それは逆よ。なんで日本人は色白が尊ばれるの?」と逆に聞かれた。

どうやらこういうことらしい。
欧米では「日焼けしないと骨粗鬆症になる」と信じられているのだ(ま、確かに日に当たるとビタミンDが出来るし)。で、日傘さしたり手袋してたりする日本人の女性を影で指さして笑っているというのである。
「あんなに白いのに、少しも日に当たらない。栄養不足になるし、第一不自然」って。

つか、ヨーロッパは日が弱い。
丸一日日光浴している人とかでも、皮が剥けるまで焼けている人をほとんど見ない。そこまで日に焼けない程度の日光量なのだ。冬はもっと日光が少ない。だから少しでも当たって骨粗鬆症を防ごうという気持ちが強いのだろう。

だが、この件に関してはたぶん日本人の方が進んでいる。
フランスから帰ってきて数日後の新聞にWHO(世界保健機構)の報告書が出ていた。「過度の紫外線は皮膚ガンや白内障の原因になるとして日光浴自粛を呼びかける」とある。日光浴ブームとオゾン層の破壊進行の相乗効果で、白人を中心に皮膚ガンが急増しているらしい。紫外線の浴びすぎは免疫機能の低下につながる恐れもあると書いてある。

日傘の日本人を指さして笑っているのも今のうちじゃい!


ま、ミーヌとそのことで言い争う気はなかったので

「ふーん、なるほどねー。
 海岸でみんながトップレスにしているのもそういうこと?
 少しでも日光にあたりたいとか、そういうこと?」

と話をかえたら、

「あら、トップレスには全然別の理由があるのよ」

と、彼女は艶然とほほえんだのである。

 

■すべては恋のために

ボクが行った6月の末で、海岸トップレス割合は約3割。
ミーヌに聞いたら、「シーズンに入ったら(7月8月)ほぼ100%トップレスよ。上を着けている方が変な目で見られちゃうくらい。ええ、もちろん私もトップレス」・・・ブーー(鼻血が吹き出す音)


ミーヌが話しだす。

・・・トップレスはね、水着の跡をつけず、きれいに焼いて、男に見せるためのものなの。
恥ずかしくないかって? ないわよー。好きな男に見せるためだもの。きれいにきれいに焼いて、好きな男にベッドの上で見せて、お互いに観賞しあって楽しむの。で、数日激しく楽しく愛し合って、合わなければハイお終い。次の相手を探すのよ。

ええ、私、日本人の血が半分入ってるから、そういう考え方にどこか馴染めないの。
生粋の日本人であるママとかは「フランス人に女はいない。メスしかいない!」っていつも怒ってる。

例えば、昨日ラジオを聞いてたんだけど、なんか相談コーナーみたいなので、男の子がね、相談してるのよ。「ボクの彼女を3Pに誘ったんだけど、断られちゃったよー。どうなってるんだろう。ねぇDJ、どうすればいい?」みたいな電話相談。
で、DJが普通に「それは女の子の方がおかしいねぇ〜。そんな子、別れちゃえば?」って言うのよ。信じられる?

結婚している同士が週末お互いの愛人に会いに行くのもフランスでは普通だし、同性愛も全然普通。でも、ついに3Pまで普通になりつつあるの、フランスでは。 ママの言うこともわかるわね。

だいたい、フランス料理って何のためにあるか知ってる?

特にディナー。
前菜からメイン、そしてデザートってずぅっと盛り上がっていくようになっているでしょ?
というか、盛り上がっていかないといけないの。メインのあとのデザートがしょぼかったら、意味ないの。そういうレストラン、日本では多いけど。

長い前戯なのよ。その夜のための。

ワインと食事と甘いものでどんどん盛り上がって、そしてベッドインするの。

フランス人にとって、セックスは人生のすべてなの、ある意味。

日焼けも食事もスポーツも会話も仕事もお酒も音楽も絵画もインテリアも、すべていい夜のためにあるのよ、極端に言えばね。

そう。そうね、和食ってメインが出たあとに、ご飯、柿、お茶みたいにぐぅーっと盛り下がるわね。そうそう。あれはその後ゆっくり寝るための食事ね。同じ寝るでもフランスとはずいぶん違うわ。すごくストイックで日本っぽいわ。恋の気分へと盛り上がる食事では絶対ないもの。

 

■日本人のオジサンが世界で一番かわいそう

「ねぇ、さとなおさん」・・・ミーヌの話は続く。

ねぇ、人間って楽しむために生きるのよね。
少なくとも苦しむために生きてるわけじゃないわよね? うん。そうよね。

だから、ついていけない部分も多いけど、フランス人の恋への真剣さってすごくよく理解できるの。

日本人って恋に生涯をかけるじゃない?
すぐ、一生をかける。不倫しても離婚や心中につながってしまうわよね。
それって変。
恋って一回一回の食事みたいに、ただ意味なく楽しいものだと思うの。

いや、フランス人が不真面目なのではなくて、フランス人はたとえ1晩の恋でも真剣に楽しむの。
だってそれこそ「人生」だから。
いちいち恋に生涯かけてたら、ちゃんとした楽しい恋は出来ないもの。


でね、楽しむことが人生の主体だとして、このごろ一番不思議に思っていることがあるのよ。

あのさー。
あの、カロウシってやつ? あれってなに?
本当に理解できないの。過労で死ぬって書くんでしょ?
それも自分で会社を経営してる社長とかじゃなくて、雇われサラリーマンが死ぬんでしょ?
心底、どういうことか理解できない。

ほら、ワールドカップの時もどこかの県の職員かなにかが自殺しなかったっけ?
なにか、どっかの国のチームを誘致したけどうまく運営できなくて、みたいな。

あれってなに?
責任死?

わかるんだけど、わからない。
なんのために生きているのかしら。

私、よく思うんだけど、日本のオジサンが世界で一番不幸だわ。日本で10年くらい働いたからよくわかる。

必死に働いてばかりいて、家族からも世間からもそんなに尊敬されてなくて、食事も赤提灯とかで同僚と愚痴言ってて、たまに恋したとしても不倫だ離婚だってなっちゃって、それもできない人はスナックの女とかに貢いじゃって、運動もバカンスもしないで働いて、あげくの果てにカロウシ?
カロウシしないで定年まで勤め上げても(勤め上げるという感覚も全然わからないんだけど)、単に会社から「あなたは老人なのでもう入りません」と言われただけのこと。

ねぇ、なんのための人生なの?
恋もせず、おいしいものも食べず、いったい何してるの?
恋は若いときだけのもの?
30代40代50代は人生じゃないの?

私、本当に、心から、理解できないの。

私、もう日本人の心、忘れちゃったのかしら。理解できないのよ。




言い返すこともできず、言い返す気も起こらず、もうとっくになくなったエスプレッソをすするフリをするボク。
眼下にコートダジュールの夜景が大きく広がる山の上のレストランでふたりして黙り込む。

恋の話をしているときは、なんだか盛り上がっていた気分も今は消え、日本での自分の生活をただ顧みる。

なんのための人生だったっけねぇ・・・



その答えを、フランスにいる間は確かにこの手に掴んでいた気がしていたボクである。

それも、日本に帰ってたった1ヶ月半くらいで、もうこの手からスルリと逃げようとしている。

 

 

 

ねぇ・・・

なんのために生きているんだったっけ?

 




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