健康の素(1)  --97.11.03




食生活には気を使う方である。

朝は野菜スープで始まるし、基本的に玄米を主食としている。

でも仕事柄ちょっと不規則な毎日だし徹夜も多い。こうしてコンピューターにもしょっちゅう向っている。目は酷使するし、腰にも長時間残業を課してしまっている。ああ、それに肝臓もかなりしごいているなぁ。


そんな酷使がたたったのか、ある日(半年前くらいかな)を境に「無限偏頭痛地獄」におそわれてしまったことがある。

偏頭痛がとれないのである。つねに頭がキガンキガンしている。
仕事をしていてもキガーン、キガーン、キガーン!
飲んでいてもキガーン、キガーン、キガーン!
寝ていてもキガーン、キガーン、キガーン!


まず目の疲れを考えた。
酷使しまくっているからね。
眼科に行った。結果はシロ。

次に脳血栓関係を疑った。
脳外科。CTスキャンに血管造影(だっけ?えぇとMRIとかいうの)。
あれって怖いよね。でもやった。
カコーン、カコーンという潜水艦みたいな音のする機械に入って検査。

きれいなもんだ、と言われた。


脊椎を調べた。
異状なし。

頚椎も調べた。
まるで異常なし。

悩んだ。
肉親から上司までみんな心配してくれた。

人間ドックに入ってオプションからなにから全部検査してもらう。

……正常。そんなバカな!



だんだん仕事に差し支えるほどの痛みになってきた。


ギガーン、ギガーン、ギガーン


鍼灸院にも行った。ハリである。カイロもだめだ。
ぜんぜん直らない。

こりゃ霊媒でも呼ぶか?

とりあえず休職するか……?




ちょっと絶望的になったとき上司から「フットマッサージ」の先生を紹介された。
つまり足の裏を棒でゴリゴリするやつである。足のツボを刺激するというだけのものだ。台湾とかでわりとはやっているという話は聞いていた。

それが、意外なほど家の近くにあった。

そんなのでは直らないだろう。そう思った。
なにしろ現代医学 & 東洋医学の粋を尽くしても原因がわからない難病なのだ。
札付きの偏頭痛なのである。
バカにしてはいけないのだ!(面白いものでこの頃には自分の頭痛を威張るようになってきた。病人の心理は複雑である)


上司の勧めなので断るのも何なので歩いて出かけた。家から3分でついた。
看板も出ていない。あやしげ。知らなかったはずだ。

先生は岡田先生という。意外なことに若い女性の先生。美しい人だ。

部屋にはヒーリングミュージックがかかり、あやしさ倍増。大丈夫か?
だいたい先生が若すぎる。やっぱり70歳くらいのおっさんじゃないと効く気がしない……などと思っていたら、いきなり、こちらの症状も聞かないで足の裏を押しはじめた。


、」


痛いという言葉が出ないほど痛かったのは後にも先にもあの時だけである。

先生は初心者には棒ではハード過ぎるだろうと思いやって、指を使って軽く押しただけなのだ。
なのに……


い〜!





地獄であった。

一応中学高校とラグビー部だったり、大学のとき腹膜炎やったり、とにかく痛いのはそれなりに強い自信があったのだが、もう「殺して!」の世界であった。

いまそれをやめてくれるなら、僕は喜んで悪魔に魂を売り渡す!









ハイどうもぉ。おしまいですぅ。






そんな声が遠くで聞こえた気がした。もう1時間半が経っていた。気絶していたのか?と一瞬思った。




結論からいうと、これがウソのような結論なのである。

いや結論がウソみたいなのではなくて、過程がウソみたいなのか?まぁどっちでもよろしい。

実は、これでスパッと、直ったのだ。
翌日からウソみたいに頭痛が消えた。




岡田先生いわく「あんな足の裏ははじめて」だそうだ。
いろんな足の裏を触ってきたが、あんなにありとあらゆる筋が張って固くなっていた足の裏は見たことがなかったそうである。

「よくあんな足で歩いていましたね」
「は?はぁ」
「特に首筋につながっている筋がかちんかちんに張っていましたよ。あんなの初めて」
「首?首はお医者さんによく診てもらったんですが?」
「うん。筋が張って神経を圧迫しているとかいう類のことってわりと西洋医学ではわかりにくいのよ」

つまり、足からつながっている筋が固く張って、それが神経を圧迫して頭痛になっていた、ということらしい。うう。そんなことか。じゃぁ首筋をマッサージすればよかったのか? というとそういうことでもないらしい。なんだか難しい東洋医学の心得をいっぱい教えてくれた。が、忘れてしまった。




それ以来、いまだに信じられないことだが、偏頭痛はまったくない。
そして岡田先生は、僕の「健康の素(1)」となったのである。

頭痛がしようがしまいが、調子が悪かろうが良かろうが、必ず2ヶ月に1回は足の裏を正常に戻してもらっている


 「あぁ肝臓が弱ってますね」(え?あ、確かにこの頃飲み過ぎかも)
 「長時間座っていませんでした?」(す、するどい!飛行機に12時間乗っていた)
 「左目がやられているみたい…」(あ、寝ころんで本読んでいた、左を下にして)


足の裏を触るだけで、どうやらすべてがわかるらしいのである。

い・た・い!


僕も3語は発せるくらいは余裕が出来た。

「あの時のことを思えば、赤ちゃんみたいに柔らかい足の裏になりましたよ」

先生もいまでは棒を使用している。


大変な進歩なのである。




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