Remember! P.H.!  --98.02.24




長野オリンピック「ジャンプ団体」。



原田の2回目。



1回目は失敗ジャンプとすら言えないような、まさかの79.5メートル。

岡部、斎藤の超絶ジャンプでなんとか盛り返してきたが、
彼はもう一度、あのジャンプ台から跳ばなければならない。
それも世界注視のもと……。
そのプレッシャーはいかばかりか。




「リレハンメルの二の舞!」
 「また原田か!」
   「原田またしても失速!」
  「勝負弱い男…」
「あいつのせいで金とれなかった」
  「人はいいんだけどなぁ…」
   「船木をあの強さを見ろ!」
  「ホームランか三振か…」
 「また失敗するんじゃないかぁ?」
「きっと失敗するぜ」
 「きっと失敗する」
  「きっと失敗する」
   「絶対失敗する」
  「必ず失敗する」
 「失敗する」
「失敗する」
「大恥をかく」
「恥をかく」
 「家族も恥をかく」
  「恥をかくような失敗をする」
   「失敗する」
     「失敗」
     「失敗」

「あ"〜!!!!」






最近日本人が経験したあらゆるプレッシャーの中でも、
これほどのものはなかったのではないかな、と想像する。




1回目が79.5メートルに終わった時、
彼はどこかへ逃げてしまいたかったに違いない。
(奥さんは観ていられなくて逃げてしまった)




自分はまだしも、家族にまた迷惑をかけてしまう。
凄いジャンプを連発した岡部や斎藤にも迷惑をかけてしまう。
ニホンすべての期待を裏切ってしまう……




ボクなら失神していたかもしれない。




2回目を跳ぶために、リフトに一人のる原田。
スタートゲートの方をながめながら、ひとりリフトの上で物思う原田。

ボクはこの映像が、今回のオリンピックで一番印象に残った。















その翌日。
ボクは大きなプレゼンテーションをしなければならなかった。
勝てば何億というお金が(会社に)入ってくる。
ボクはそのプレゼンテイターだった。

プレゼンする相手は30人くらい。
大きな会議室に座っている。
お偉いさんばかり。
一番前にはその会社の社長がデンと座っている。


このプレゼンのために何日もみんなで深夜作業を重ねてきた。
年末からずっとかかりっきりと言ってもおかしくない作業だった。



気後れする。
ボクの説明がヘボだったら、競合他社に負けるかもしれないのだ。

ずっと一緒に苦労してきたみんなに申し訳が立たない。
会社にも迷惑をかける。
まぁ会社に迷惑をかけるのはあまり気にならないが、
でも何億というお金がフイになると思うと……。




プレッシャーが、徐々にやってくる。


「負けたらどうしよう……」
 「負けるかもしれない……」
  「負けたらオレの説明のせいだ」
   「説明が悪いから負けた」
    「さとうで負けた!」
  「さとうの説明が下手だった」
 「さとうがミスった」
「さとうが失敗した」
「さとうがあそこで言いまちがえた…」
 「さとうが何億の仕事で失敗した」
  「さとうはきっと失敗する」
   「オレはきっと失敗する」
    「オレは失敗する」
   「失敗して恥をかく」
  「失敗して迷惑をかける」
 「失敗して皆に迷惑をかける」
 「失敗する」
  「失敗する」
   「失敗」
    「失敗」
     「失敗」
     「失ぱ…
うるさいわい!


グダグダぬかすな!頭の中の虫どもめ!




いまや私には「お守り」があるのだ!
こういう時のためのありがた〜い金言があるのだ。
そう、もうこれでプレッシャーとはオサラバなのだ!



Remember! Pearl Harbor! ならぬ



Remember!
Pressure of Harada!



そう、Remember! P.H. だ!

あの日本有数のプレッシャーを経験した原田に比ぶれば、
こんなプレッシャーにいかほどのことがあろうか!
カスみたいなプレッシャーではないか!


Remember! Pressure of Harada!

Remember! Pressure of Harada!

Remember! Pressure of Harada!





そう呟きながらボクは ごう然と社長の目をにらみつけ、
プレゼンテーションを始めたのでありました。

















P.S.
で、プレゼン結果はどうだったのかって?

いやぁ〜〜〜〜どうやら「にらみつけすぎ」たようで…………。



結果を出した、原田は偉い!(涙)





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