温と泉  --98.03.11




長いこと「温泉」の魅力がわかっていなかったのである。



バカなワタシ。



でもね、
わかろうと努力はしたの。


北はさいはて、羅臼の熊の湯。
雪の中で露天風呂に浸かったのをはじめ、
道東のほとんどの秘湯は浸かりまくった。

本州では、蔵王や湯の倉、草津に鬼怒川、箱根に湯河原。
山中に芦原に片山津。
龍神やら白浜やら城崎やら有馬やら・・・

南は、湯布院は何度も行ったし、二宮や別府や阿蘇や・・・



歳のわりには数はこなした。
食い意地がはっているから、わりと「料理がおいしい名温泉旅館」というところに貯金して出かけることが多いんだけど、とにかく近くに温泉があったら必ず浸かりに行ってはいたのである。


が、


温泉好きには申し訳ないけど、
イマイチ、温泉「自体」の良さがわからなかったんだよねぇ。


「温泉」じゃなくてただの「温湯」でも同じくらい気持ちいいんじゃないの?って・・・



たしかにふつうの「温湯」より気持ちはいいが、でもみんながあんなにホメたたえるほど「温泉」はキモチガイイカ? シチュエーションとかがキモチイイのではないか?

ふつうの「温湯」でも疲れは取れるよねぇ。本当に「温泉」は普通の「温湯」よりツカレガトレルノカ? 旅をしている気分転換が大きいんじゃないの?

たしかに「温泉」はあったまる。でも「温湯」でもきっとおなじくらいはあったまるぞ。評判や先入観で、普通のお風呂よりあったまるとオモイコンデハイナイカ?

サルやシカが傷をいやしに来ていた、とかいう由来のところが多いが、そんなもん「温かい泉」だったから温めていやしたのであって「温泉」の効能が効いたとは限らない。第一、本当に「温泉」で病気はナオルノカ?少なくともボクの回りには「温泉」で病気を治した奴はいないぞ。「温湯」でも治るんではないのか?(ここらへんかなり偏見。治った人も多いんでしょう)



いろんな温泉に行って、それを楽しみつつも、どうしても以上のような疑問が頭に残るんですよね。

「たしかに気持ちはいいけど、別にボクはこのお風呂がただの『温湯』でも気持ちがいいや」

っていう気分。

そう感じたことないですか?



ボクがいままで浸かってきて最高の内風呂は湯布院の「玉の湯」のものなんだけど、ここも、もしあれが温泉でなくても、絶対気持ちがいいと思うのだ。
ただの「温湯」でも、いい。
充分、心とからだをいやしてくれるはず。
だってあの素晴らしいシチュエーション。
温泉だからこそ、というわけではないと思うのだ。




結局、

結局、温泉好きというのは、まずもともと「お風呂好き」であって、
景色も気分も変わるシチュエーションで好きなお風呂に入れることがまず幸せ。
秘湯とか行っちゃうとそれだけで舞い上がってしまうほどのお風呂好き。
で、たしかに家のお風呂よりキモチイイし疲れが取れる気がする。

だからオンセンオンセンとさわぎたてる。

例えば、誰も知らないきたない場末のラーメン屋がちょっとおいしかったりすると、その実際の味以上においしく感じてさわいでしまう食べ好きの心模様と、そうは変わらないのではないだろうか・・・


ボクは松本清張の「点と線」ばりの推理を働かせつつ(どこがじゃ!)
あ、ちなみに表題の「温と泉」ってそのモジリね、(って説明するな!)
温泉問題にそう決着をつけたことにしていたのであった。(つけるな!)





が、しかし、

今回、

その気持ちを改めざるを得ない「温泉」に出会ってしまった。





あ、なにが「今回」かって説明しないとね。
実は3/5〜10まで6日間、家族で温泉旅行に行ってきたのだ。

長らく日記その他を更新しなかったのもそういう理由。
旅行前は旅行前であるという理由でバカ忙しく、旅行中はパソコンに向かわなかった。

いろいろ美味しい物も食べたぞ。
うーん。書きたい。みんなに話したい。

でもそれはまたの機会に。
「さぬきうどん日記」みたいに旅行記を書くつもり。 ちょっとお待ちを。


まぁ簡単に旅程を書いておくと

 3/5 鹿児島 霧島で黒豚を食す。 妙見温泉「忘れの里 雅叙苑」泊。
 3/6 鹿児島 市内で薩摩料理。  吹上温泉「みどり荘」泊。
 3/7 指宿  枕崎でかつお料理。 指宿温泉「波の上」泊。
 3/8 宮崎  市内で蕎麦。夜は高鍋で牡蛎。「シーガイア」泊。
 3/9 宮崎  シーガイアで一日遊ぶ。   「シーガイア」泊。

で3/10に帰ってきたわけ。





閑話休題。

この頃なにかと雑誌に取り上げられる「忘れの里 雅叙苑」もかなり良かったが、これも「温泉宿」というより「温湯宿」として良かったんだなぁ。



問題の温泉は3/6に泊まった「みどり荘」の露天風呂。


実は3/6は「結婚記念日 & きょうこの誕生日」というダブルオメデタ記念日なのだが、 これに今回もうひとつ要素が加わってしまった。


「温泉開眼記念日」


そう。
そのくらいすごい「温泉」だった。



この際、シチュエーションとか旅館の質とかはまるで無視して話を進める。



なにしろ温泉の質がすごすぎるのだ。

入った瞬間に「お?これはいままでの湯となにかが違う・・・」と、全身のヒフが知覚過敏になりその理由を探し始める。
探しながら鳥肌が足先から頭に向ってゾワゾワと走り始める。

お湯と体の溶け合い方がいままでの温泉とまるで違うではないか!

なんだこの「じゅんさい」になったような気分は!



ヒフのうえに薄皮一枚ゼラチン状のものがかぶさってヒフを優しく包み込んでいる。
なんと柔らかいヒフ当たり。
そしてじわじわと身体を遠くから温めてくれるのだ。まるで遠赤外線のように。


そう、「遠赤外線系じゅんさい包み」とでも呼ぼうか。


手でヒフをなぞるとヌルヌルのツルツル。
湯温はたいしてあつくないのだが(というかぬるめ)、汗が吹き出してくる。


硫黄の香りが適度に強く、気分をリラックスさせてくれる。

そしてそのうえ、無色透明なのである。

これだけ「じゅんさい」なのにどうしてこんなに無色透明なのか・・・。





見事であった。

インド人も絶対ビックリである。

温泉のお湯自体にこれだけ感動したのは初めてである。

もう入っては出て、出ては入って、寝るのも食べるのも惜しんで浸かった。

結婚して初めて夕食の時間に遅れたボクを、優子がかなり心配したほどだ。


「夕食なんか食べたくないわい」状態。


ボクの食べることに対するイヨーな情熱を知っている人なら、その事態の異常さをわかってくれるはず。



食事を運んできた女将に

 「いやぁ〜!びっくりしました!すごい温泉ですね。
  こんなに温泉のお湯自体に感動したのは初めてです」

と告げたら、ほほを紅潮させて

 「雅叙苑さんとかみたいにお金をかけた宿にはまったくかなわないけど、
  うちは温泉の質だけは自信がありますから。日本一だと思っていますから」

と喜んでくれた。


女将は宿を謙遜するけど、「忘れの里 雅叙苑」とはまた違った雰囲気でシチュエーションがまた見事なのですよ。でも、ここでは書かない。
そのうち旅行日記に書こうと思う。


温泉通の斎藤茂吉が「天下の名湯」と絶賛した気持ちがよくわかる。
いまや温泉ライターと化した嵐山光三郎が「人に教えたくない」と激賛した気持ちも良くわかる。

わかる。

わかりすぎる。

これは本当に、あらゆる意味で「温湯」を越えているのだ。




いやぁ〜、温泉って、最高ですねぇ。

ボクはもう、いきなり温泉の味方なのだ。
これから全国の温泉を巡って「みどり荘」に匹敵する奴を探し出してやるつもりじゃ!

このホームページを読んでいる人は幸せだなぁ、そんな温泉を逐一ボクが教えてくれるんだからなぁ(注意;温泉に浸かりすぎて脳みそオメデタ状態になっている模様)



あー、オンセンオンセン!

チミチミ、そこの若いの、そう、チミ。
本物のオンセンを知っておるかに。
チミィ、オンセンの良さも知らないのかにぃ。
それで大人と言えるかに?





優子「ねぇちょっとぉ、
   温泉温泉って、なんだかオヤジ臭くない?」



      ・
      ・
      ・







オヤジ臭くて、けっこう!

もうこの温泉人生、後戻りは出来ないのである。









P.S.

「みどり荘」は鹿児島市街から車で西へ40分くらい。
吹上温泉に行けば表示が出ているのですぐわかります。
一泊二食付き12000円より。

24000坪の敷地に10部屋だけの穴場旅館。
簡素だけど清潔。それにまぁ安いよね。

ちなみにお風呂はいくつかあるけど、屋内浴場と露天風呂では泉質が違う。
上に書いた「極上の温泉」は露天の男湯「椎の木湯」。
同じ泉源で「もみじ湯」というのが女湯。

実は宿の許しを得て女湯も入ったんだけど(すいていたしね)
男の「椎の木湯」の方がより泉質が良い気がしたなぁ。

屋内浴場は・・・イマイチ。「温湯」としてはなかなかだけどね。





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