ねぇったらば!  --99.01.06




今まで食べたカニの中で一番美味しかったのはね、

羅臼で食べたカニ、そう、知床半島のラウス、

あれは2月だったかなぁ、

一番寒い時期の知床にロケハンで行ったのよ、

パソコンのCMのロケハンなんだけど、

羅臼の漁師がパソコンを使っているらしいって情報があって、

それをCMにしよーっていう場当たり的かつ漁師差別的企画でさ、

でもまぁ漁師がパソコンを使ってるっていうのがまだニュースになる時代でさ、

とにかくその漁師に会いに行こうってさ、

厳冬の知床によちよち出かけたわけですよ、



あれはまだキミと結婚するずっと前、うーんと、8年くらい前かな、

まだボクもパソコンやるなんて思ってもいなかった頃、

いま考えたらその漁師、ロータスで収支計算していただけなんだけど、

漁から上がってきた海の男が、

かじかんだ赤い指でキーボード打つのは確かに絵になったな、

んでさ、取材したあと一緒に飲んでさ、カラオケも行ってさ、

漁師たちとものすごく仲良くなってさ、

したら「よーし漁つれてってやっから明日の朝3時に港に来い!」って言うんだよ、



2月の知床の朝3時っていったい零下何度くらいだったんだろうなぁ、

3時なのにスケソウダラ漁で港は活気に満ちていてね、

いまから半日、船に乗るかと思うともう怖くてさ、

だって、オホーツク方面まで行くっていうじゃないの、

海に落ちたら死ぬし、

沖は寒いなんてもんじゃないだろうし、

だいたい漁なんて初めてだからもうビビリまくりでね、



どうなったのか興味ない?

なんだか興味なさそうだなぁ、

いやさ、結局さ、大シケでね、こりゃ素人には無理だってんで置いてかれたのよ、

夕方4時には帰ってくるから待ってろ!って、

ボーーーーって汽笛鳴らして出ていくのよ、

雪の中、大シケの海へ、出ていくわけよ、

もう頭の中は「兄弟船」エンドレスよ、

やっぱ鳥羽一郎なのよ、男の世界はよ、



でも乗ってみたかったなぁ、

あんな機会もうないだろうなぁ、



あ、カニの話だったね、

そんでさ、夕方3時頃から港に行って待っていたのよ、

もう暗くなり始めてさ、

朝より寒いくらいで、

そしたら沖の方で ボーーーーーー ってさ、

だんだん近づいてくるわけ、

ボーーーーーー

 ボーーーーーー

  ボーーーーーー

   ボーーーーーー



堤防の突端で手を振ったらさ、

向こうも船首に立ってさ、

なにやら赤いもの持って手ぇ振ってんのよ、

これがさ、

見事なタラバガニでさ、

甲羅が30センチ以上はあったかな、

スケソウダラの網にたまにひっかかってくるらしいんだな、




なぁ、食ってばかりいないで話を聞けって、

そりゃさ、この毛ガニもうまいよ、

うん、まぁまぁだ、

でもさ、あのタラバカニは、もう信じられなかったのよ、

漁師がさ、堤防のドラムカンに海水入れてさ、たき火してさ、

ガビガビ動いている捕れたてのタラバガニをさ、

その場で茹でてくれたのよ、

これがさ、

たとえば足をこうやってもぐでしょ、

そうするとチュルルルってすべての繊維が抜け出てくるのよ、

殻なんかには一筋も残らないの、

このカニもさ、新鮮らしいけど、

ほら、こうして箸でガジガジしないと取れない繊維があるでしょ、

それがもう猫が舐めたみたいにきれいなの、

ひと抜きでだぜ、




で、いよいよひと口、と、なるわけだ!

チュルルン!

・・・・・・・!!!

・・・・・・・・!!!!!

・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!



・・・もうね、いままで食べてきたカニはなんだったのだろうって、

世の中にこんなにうまいものがあるのかって、

なんというか、背筋にゆっくりムカデが這ったね

電気が走るなんて、そんな一瞬の快感ではないのよ、

ムカデがゆっくり、尾てい骨のあたりから首筋まで、

で、ムカデがその足を降ろす度に、その地点から全身に向かって鳥肌が走る、

わかるよね、想像できるよね、



いや、この毛ガニもうまいよね、

でもあれにはかなわないよなー、

あれが多分ボクの一生で一番のカニ体験だと思うな、

あれを越えるカニに出会えるわけがないと思うのよ、

あ、キミ、指から血が出てるよ、

何チカラ入れてんの、カニはさ、こうやって剥くんだって、

ほら、ここを持って、棘をさけて、

あれ? なに歯くいしばってんの?

コメカミから顎にかけて柳葉敏郎みたいに強ばってるよ、

この毛ガニ、おいしくない?

せっかくもらったんだからさ、もっと楽しく、あれ?

ねぇ、どこ行くのさ、

まだ、カニ、こんなに残ってるよ、

ここのミソのとことか、うまいよー、

ミソと言えば、そのタラバガニのミソがさぁ、

ねぇ、こっちに来て話を聞けってば!

まだここから話がおいしくなるんだからさ!



ねぇ!

ねぇったらば!

あ、ここ、たらばとタラバをかけたんだけどさ、

おーい!

もういらないの?

ねぇ!

ねぇったらば!





毛ガニ
せっかく佐藤家にもらわれてきたのに、
あの、伝説のタラバガニに比べられて可愛そうな毛ガニくん。
直径20センチ超の大物。








P.S.

あ、そういえば、明日から1週間、バンコクに出張だ、

そう、タイのバンコク、

うん、トム・ヤン・クンに、ヤム・ウンセンに、シンハ・ビール!

いやー楽しみ楽しみ!

キミの分まで食べてくるからね!



あ、おい、どこに行くんだ?

ねぇ、

おい!

おーい!

どこ行くタイ!(熊本弁で)




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